必ずしも専門家ではありませんので,不正確な回答もあります.教育学部や学外の別館から公開しているホームページの質問箱とQ&A集にも回答(一部)を載せたいと思います.質問頻度が減少してきたため,種々の理由で過去に削除した質問の中から,内容的に良い質問を選んで質問文のみを復活させました.これについては,質問者への直接的な回答を行いません.
ここの回答では,濃度の求め方や濃度の相互換算等に関する質問をまとめてみました.濃度には種々の定義があります.その理由は,昔から人間が手持ちの器具を使って簡単に実験できる様に,また便利な様に勝手に決めてきたためだと思います.しかし,溶液の密度DSが分かれば,濃度は相互に換算できま� ��.
質問761 水溶液の百分率(パーセント)濃度の求め方が分かりません.詳しく教えて下さい.
回答 百分率(パーセント)濃度には,質量を基準にした定義と混合前の体積を基準にした定義があります.
1.質量百分率(パーセント)濃度WC(mass%または%)
溶液100g中の溶質の質量(g)で定義します.昔は重量百分率(パーセント)濃度(wt%またはweight%)と言いました.溶媒(溶かす物,例えば水H2O)の質量をW1(例えば90g),溶質(溶かされる物,例えば塩化ナトリウムNaCl)の質量をW2(例えば10g)とすると,質量百分率濃度は
WC = W2/(W1+W2)×100mass% = 10g/(90g+10g)×100mass% = 10mass% (または%,wt%,weight%)
ちなみに,この10mass%塩化ナトリウム水溶液の密度はDS=1.07g/mL at 25℃なので,その体積VSは
VS = (W1+W2)/DS = (90g+10g)/1.07g/mL = 93.5mL at 25℃
2.容量(体積)百分率(パーセント)濃度VC(vol%,v/v%またはvol/vol%)
液体同士や気体同士を混合すると体積が変化することがあるため,これらの場合には混合前の体積を用いて定義します.溶媒の体積をV1(例えば水70mL,D1=0.997g/mL at 25℃,W1=69.8g),溶質の体積をV2(例えばエタノール30mL,D2=0.786g/mL at 25℃,W2=23.6g)とすると ,混合後の溶液全体の体積はVS≒97.4mLになります.このときの容量百分率濃度VCは
VC = V2/(V1+V2)×100vol% = 30mL/(70mL+30mL)×100vol% = 30vol% (またはv/v%,vol/vol%)
ちなみに,この30vol%エタノール水溶液の密度DSと質量百分率濃度WCは
DS = (W1+W2)/VS = (69.8g+23.6g)/97.4mL = 0.959g/mL at 25℃
WC = 23.6g/(69.8g+23.6g)×100mass% = 25.3mass%
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なお,液体同士や気体同士の混合物の濃度単位が単に%だけの場合には,普通はそれがvol%であることを意味します.例えば,空気中の酸素O2濃度は20.9%ですが,これは20.9vol%のことです.窒素N2濃度を78.1vol%,アルゴンAr濃度を0.9vol%として計算すると,空気中の酸素の質量百分率濃度は
WC = 32.00g/mol×0.209/(32.00g/mol×0.209+28.02g/mol×0.781+39.95g/mol×0.009)×100mass%
= 23.1mass%
この様に濃度の値が違う理由は,酸素の分子量が窒素より大きいためです.
3.類似した濃度の定義
質量千分率WT(‰またはmass‰)は,溶液1000g中の溶質の質量(g)で定義します.
WT = W2/(W1+W2)×1000‰ (またはmass‰)
質量百万分率WM(ppm)は,溶液1000kg中の溶質の質量(g)または溶液1000g中の溶質の質量(mg),すなわち溶液全体の質量の100万分の1を基準として定義します.
WM = W2/(W1+W2)×106ppm
その他に,溶液全体の質量の10億分の1を基準とした質量十億分率(ppb),溶液全体の質量の1兆分の1を基準とした質量兆分率(ppt)等があります.数式は省略しますが,これらは上と同様な形になります.
質問762 水溶液のモル濃度や規定度の求め方が分かりません.詳しく教えて下さい.
回答 モル濃度には,溶液の質量を基準にした定義と溶液の体積を基準にした定義があります.
4.質量モル濃度CM(mol/kg)
溶媒1kg中の溶質の物質量(mol)で定義します.溶質の分子量(モル質量)をM2(例えば塩化ナトリウムNaClなら58.44g/mol)とします.溶媒の質量W1をg単位からkg単位の数値W1Kに換算して,上の10mass%塩化ナトリウム水溶液の質量 モル濃度CMを求めると
W1K(kg) = W1(g)/1000g/kg = 90g/1000g/kg = 0.090kg
CM = W2/M2W1K = 10g/(58.44g/mol×0.090kg) = 1.90mol/kg
質量モル濃度CM(mol/kg)と質量百分率濃度WC(mass%)の換算式を求めるには,最初にWCの式の逆数をとって変形します.
100/WC = (W1+W2)/W2 = W1/W2+1 , W1/W2 = (100−WC)/WC
W2/W1 = WC/(100−WC) , W2/W1K = 1000WC/(100−WC)
∴ CM = 1000WC/{M2(100−WC)} , WC = 100M2CM/(1000+M2CM)
5.(容量,体積)モル濃度CV(mol/L)
溶液1L中の溶質の物質量(mol)で定義します.単にモル濃度と言えば,普通は容量モル濃度のことを指します.溶液の体積VSをmL単位からL単位の数値VSLに換算して,上の塩化ナトリウム水溶液の容量モル濃度を求めると
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VSL(L) = VS(mL)/1000mL/L = 93.5mL/1000mL/L = 0.0935L
CV = W2/M2VSL = 10g/(58.44g/mol×0.0935L) = 1.83mol/L
容量モル濃度CV(mol/L)と質量百分率濃度WC(mass%)の換算式を求めるには,最初に密度DSの式を変形します.
DS = (W1+W2)/1000VSL , VSL = (W1+W2)/1000DS
∴ CV = 1000DSW2/{M2(W1+W2)} = 10DSWC/M2 , WC = M2CV/10DS
6.規定度CN(Nまたはeq/L)
溶液1L中に溶質が何グラム当量含まれているかで(1グラム当量を単位(eq)として)定義します.酸や塩基の場合,1グラム当量とは1molの水素イオンH+または水酸化物イオンOH-と反応する質量(g)です.すなわち,酸や塩基の1mol の質量を酸や塩基の価数NV(eq/mol,1mol が何グラム当量か)で割った値になります.言い換えると,規定度とは水素イオンや水酸化物イオンで考えたときのモル濃度に相当します.したがって,塩酸HClや水酸化ナトリウムNaOH水溶液の様に1価の酸や塩基の場合には,規定度CN(N)と容量モル濃度CV(mol/L)が同じ数字になります.硫酸H2SO4や水酸化バリウムBa(OH)2水溶液の様に2価の酸や塩基の場合には,規定度CN(N)が容量モル濃度CV(mol/L)の2倍の数字になります.例えば,塩酸の場合には3mol/L HCl=3N HCl,硫酸の場合には3mol/L H2SO4=6N H2SO4の様になります.
酸化・還元反応の場合,1グラム当量とは1molの電子の授受に相当する(0.5molの水素H2や0.25molの酸素O2と酸化・還元反応する)質量(g)です.したがって,硫酸酸性中における過マンガン酸カリウムKMnO4は5価の酸化剤なので,規定度CN(N)が容量モル濃度CV(mol/L)の5倍の数字になります.例えば,0.02mol/L KMnO4=0.1N KMnO4の様になります.
CN(eq/L) = NV(eq/mol)×CV(mol/L) = 10NVDSWC/M2 , WC = M2CV/10NVDS
質問763 モル分率や分圧等の求め方が分かりません.詳しく教えて下さい.
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回答 モル分率は物質量(mol)の割合,すなわち数の割合であり,溶液でも混合気体でも使用します.単位時間当たりに容器の壁に衝突する分子数に圧力が比例するため,混合気体では分圧/全圧=モル分率の関係があります.
7.モル分率X
溶液や混合気体の全体の物質量(mol)に対する溶媒や溶質の物質量(mol)の割合で定義します.3成分以上の系でも下式と同様な関係が成立します.溶媒の分子量(モル質量)をM1(g/mol),その物質量をB1(mol),溶質の物質量をB2(mol)とすると,溶媒のモル分率X1および溶質のモル分率X2は
B1 = W1/M1 , B2 = W2/M2 , X1 = B1/(B1+B2) , X2 = B2/(B1+B2) , X1+X2 = 1
例えば,上の10mass%塩化ナトリウム水溶液の場合には,水のM1=18.02g/molですから,
B1 = W2/M2 = 90g/18.02g/mol = 4.994mol , B2 = W2/M2 = 10g/58.44g/mol = 0.171mol
X1 = 4.994mol/(4.994mol+0.171mol) = 0.967 , X2 = 0.171mol/(4.994mol+0.171mol) = 0.033
モル分率Xと質量百分率濃度WC(mass%)の換算式を求めると
1/X1 = (W1/M1+W2/M2)/(W1/M1) = 1+M1W2/M2W1 = 1+M1WC/M2(100−WC)
X1 = M2(100−WC)/{100M2+(M1−M2)WC}
1/X2 = (W1/M1+W2/M2)/(W2/M2) = M2W1/M1W2+1 = M2(100−WC)/M1WC+1
X2 = M1WC/{100M2+(M1−M2)WC} , WC = 100M2X2/(M1X1+M2X2)
混合気体の全圧Pと成分1の分圧P1,成分2の分圧P2およびモル分率X1とX2の間には次の様な関係があります.3成分以上の系でも同様です.
P = P1+P2 , P1 = PX1 , P2 = PX2
質問764 溶解度と溶解度積の求め方やそれらの違いが分かりません.詳しく教えて下さい.
回答 溶解度も溶解度積も溶質濃度が飽和状態に達したときの値です.溶解度積の方が広い概念であり,溶解度は特殊な場合として溶解度の中に含まれます.
8.溶解度CY(g/水hgまたはg/水100g)
溶媒(水)100gに最大限溶解する溶質の質量(g)で定義します.例えば,25℃において水W1=20gに塩化ナトリウムが最大限W2=7.17g溶解します.溶媒の質量W1をg単位からhg単位の数値W1Hに換算して,溶解度を求めると
W1H(hg) = W1(g)/100g/水hg = 20g/100g/水hg = 0.20水hg
CY = W2/W1H = 7.17g/0.20水hg = 35.9g/水hg または CY = 35.9g/水100g
溶解度CY(g/水hg)と質量百分率濃度WC(mass%)の換算式を求めると
CY = 100W2/W1 = 100WC/(100−WC) , WC = 100CY/(100+CY)
9.溶解度積KSP
溶媒(水)に溶け難い溶質(沈殿,例えば塩化銀AgCl)を水に入れてかき混ぜ,充分に時間をおいて溶け残りが沈殿した状態を考えます.上澄み液では溶質濃度が溶解度(飽和濃度)になっています.さらに,沈殿の微粒子表面では,溶質の水中への溶解と表面への析出の動的な平衡が成立しています.例えば,塩化銀AgClの溶解・析出平衡を式で表し,溶解度を容量モル濃度の単位に換算した値CYVを用いると
CYV = 1000DSCY/{M2(100+CY)}
AgCl(s) Ag+ + Cl- , K = [Ag+][Cl-]/[AgCl(s)] , CYV = [Ag+] = [Cl-]
上式で[AgCl(s)]は沈殿の見かけのモル濃度ですが,溶解反応は粒子の表面だけで起こり,粒子の内部は関係しませんので,[AgCl(s)]にあまり意味がありません.そこで普通は,これを平衡定数Kの中に含ませてしまうか,実際に有効な濃度である活量(実効濃度)を考えて[AgCl(s)]=1としてしまいます.このときの定数を溶解度積KSPと言います.なお,無機重金属イオンの分析(AgCl沈殿の生成)のときの様に,上澄み液中の銀イオン濃度と塩化物イオン濃度が等しくなくても,等しくても両方の場合で溶解度積の式は成立します.さらに,溶解度と溶解度積の関係を求めると
Ag+ + Cl- → AgCl↓ , KSP = K[AgCl(s)] = [Ag+][Cl-] , CYV = [Ag+] = [Cl-] または [Ag+] ≠ [Cl-]
溶解度積は物質によって単位が変わる(例えば,上の塩化銀の場合はモル濃度の2乗,下の塩化鉛の場合はモル濃度の3乗)ため,普通は単位をつけません.しかし,式に含まれるイオン等の濃度はモル濃度です.例えば,塩化鉛PbCl2の場合には
PbCl2(s) Pb2+ + 2Cl- , K = [Pb2+][Cl-]2/[PbCl2(s)] , CYV = [Pb2+] = [Cl-]/2
Pb2+ + 2Cl- → PbCl2↓ , KSP = [Pb2+][Cl-]2 , CYV = [Pb2+] = [Cl-]/2 または [Pb2+] ≠ [Cl-]/2
埼玉大学教育学部理科教育講座
芦田 実
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