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特集:マグマを起点に自然の営力で形成された石英鉱床
岩漿鉱床:.
ペグマタイト鉱床:.
気成鉱床:.
熱水鉱床:.
岩漿性:.
動力性:.
残留鉱床:.
沖積鉱床:.
堆積鉱床:.
動力変成鉱床:.
高温変成鉱床:.
写真は「鉱物の加藤さん」提供です。
1.岩漿(がんしょう)性鉱床
(1)岩漿鉱床
(magmatic deposits)
原始地球時代に形成された花崗岩(Granite)が、大陸の分裂時にマントルから上昇してきた 超高温の玄武岩質マグマの貫入(侵入)によって再溶融されたり、大陸の合体時の地殻変動による高温高圧の下、豊富な水分(海水等)の影響で再溶融した流紋岩質マグマは、SiO2を66wt%以上含む酸性岩漿に属している。 そして地下10km以上の深部でゆっくり冷却されると、分別結晶作用(fractional crystallization)が進んで、長石(Feldspar)類や雲母(Mica)類の晶出でSiO2成分が消費されるものの、余剰のSiO2が直径数mm程度のより完全な単結晶(β-石英)に成長し、様々な石英資源の母体となっている。 しかし、地殻変動に伴い火山となって 地上に噴出すると、流紋岩質マグマの冷却が速いため、微細結晶の集まった流紋岩(Rhyolite)となり、更に急冷された場合は、ガラス状の黒曜石(Obsidian)に変化する。
代表的な酸性岩漿である流紋岩質マグマは、約72(wt)%のSiO2分を含み、次いでAl2O3が約14%、K2O・Na2O・Li2O・CaO・MgOのアルカリ(土類)金属が約10%で、ほぼ96%を占めている。 また、重金属成分としてはほとんどが酸化鉄で、FeOやFe2O3の形で含まれているが、母体が黒雲母花崗岩(Biotite-granite)の場合は両者で2%を超え、その大半が2価の鉄(FeO)で MgOと共に黒雲母を生成する。 白雲母花崗岩(Muscovite-granite)の場合は鉄分が1%を下回り、それも3価の鉄(Fe2O3)が主体で黒雲母を晶出できず、専ら白雲母を晶出する訳であるが、残った3価の鉄イオンは高圧変成を受けて、ザクロ石を形成する場合が多い。 そして、マグマ中の残り2〜3%の成分は、2%近くの水分(H2O)と、低沸点の硼素(B)化合物(ハロゲン化物などで、低圧下では加水分解されてBO3イオンとなる)、更に炭酸ガス(CO2)、塩素(Cl)、フッ素(F)、リン(P)、硫黄(S)などで、これらをまとめて揮発成分と呼んでいる。
一方、SiO2が52wt%以下の塩基性岩漿である玄武岩質マグマは、地下でゆっくり冷却されると 斑れい岩(Gabbro)となるが、輝石(Pyroxene)や斜長石(Plagioclase)の晶出でSiO2成分が消費され尽くし、石英は形成されない。 そして、流動性が大きいため 地表に噴出し易く、微晶質で色黒の玄武岩(Basalt)になる。 また、SiO2成分が53〜65wt%の中性岩漿である安山岩質マグマは、地中深部では閃緑岩(Diorite=黒みかげ)に、噴出すると安山岩(Andesite=アンデス山脈や日本の火山に多く、"安山"は直訳)になるが、晶出する石英は少ないため、石英資源にはなりにくい。
水が沸騰するとどうなりますか?
(2)ペグマタイト鉱床
(pegmatitic deposits)
原始地球時代に誕生した花崗岩層(深さ5〜20km)の下部に、大型隕石起因の 流紋岩質のマグマ溜まりが形成され、花崗岩よりも高圧・低温下でゆっくり冷却されると、マグマ溜まりの周囲から、雲母、正長石・曹長石、石英の順に晶出し、中心に 巨大な石英鉱床を形成したことは、本文の3-4(1)で詳しく解説している。 この流紋岩質マグマは、大型隕石の衝突によって生じた 原始マグマから、地下100km近くの超高圧・高温下でカンラン石(Olivine)やザクロ石(Garnet)の晶出にMg2+やFe2+,Fe3+などの金属イオンが大量に消費され、残り少ない金属イオンも、普通輝石(Augite)や普通角閃石(Hornblende)で消耗し尽くされて、(比重が小さくなり)深さ20kmの地点まで上昇してきたマグマである。 原始地球が冷えるに従って、外部からゆっくりと冷却されると、白雲母(Muscovite)がマグマ溜まりの外側に大きな結晶を形成する。 雲母の晶出後は、融点の差で正長石(Orthoclace)→曹長石(Albite)の順に、あるいは両者が共融したアルカリ長石(Alkali feldspars)として晶出し、最後に残った大きな空洞に、水分濃度が5%以上になり、流動性の増した残漿(ざんしょう)から、石英がα-石英として晶出し、大きな結晶を形成する場合が多い。 このペグマタイト石英(珪石)は純度が99.9%と高く、ひと塊が数百万トンに達するものもある。
分厚い花崗岩層に、高温の玄武岩質マグマが貫入した場合も、豊富な水分の影響で、温度と圧力が上昇して 水分による融点低下が起こり、花崗岩が再溶融して、流紋岩質のマグマ溜まりが形成される。 その規模はかなり小さいものの、マグマが上昇せずに、地下20km近くの深部で 外側からゆっくり冷却されると、雲母、長石、石英の順に晶出し、比較的大きな結晶を形成することができる。 そして、白雲母花崗岩が母体となった場合は、3成分とも純度が高く、石英は99.9%に達するが、黒雲母花崗岩の場合は99%程度で純度は低い。 特に黒雲母(Biotite)や角閃石(Amphibole)が、水分による融点低下の影響を受けにくいため、未溶融のまま残留するか、早期に微細結晶化して 石英に混入する可能性が高い。 いずれにせよ、一つの結晶塊の大きさは、地中の深さと温度降下速度で決まるが、最大でも10万トン程度で、深さが15km以下の浅い所では、元の花崗岩に戻ってしまうのである。 しかし条件次第では、花崗岩の晶出後 様々な成分を溶解した熱水が、随所に晶洞(Druse=ガマ)を形成し、温度降下も緩慢になって、数cmの結晶粒に成長することがある。 次の「気成鉱床」で詳しく述べるが、同時に様々な気成鉱物を晶出し、鉱物標本の宝庫となっている。 鉱物図鑑に載っている ペグマタイト(Pegmatite=巨晶花崗岩)は この種のもので、本来の地球的規模のペグマタイトとは、少々趣(おもむき)を異にする。
(3)気成鉱床
(pneumatolytic deposits)
ペグマタイト晶出後に残った水分は、石英塊上部のすき間に集まり、余剰のSiO2や、マグマ中の揮発成分(CO2,BO3,Cl,F,P,S,etc.)を溶解した、濃いスープ状の高密度水蒸気になっている。 そして相次ぐ地殻変動によって、上部の花崗岩層に生じた 大きな亀裂に侵入し、花崗岩中の様々な金属イオン(Ca2+,Mg2+,Fe2+・Fe3+,Al3+,Mn2+、etc.)を溶解しながら、温度よりも 圧力が優先して低下する過程で、金属イオンや揮発成分などを材料に、様々な鉱物が晶出するのである。 代表的な例として、電気石や斧石(共にBO3を含む)、黄玉(トパーズ)や螢石(共にFを含む)などがあり、これらを気成鉱物と呼んでいる。
環状珪酸塩鉱物の電気石(Tourmaline=六角環)と斧石(Axinite=四角環)では、電気石の方が低圧下で晶出し易く、独立型珪酸塩の黄玉(Topaz=Al2SiO4OH・F)は高圧下で晶出し易いが、圧力変化の激しい気成鉱床内では、下の写真のように、別々の圧力条件下で晶出した黄玉(透明結晶)と電気石(黒色結晶)を、最� �に低圧下で晶出する螢石(Fluorite=CaF2白色結晶)がつなぎ止めている場合も多い。 そして、次項の「熱水鉱床」と同様、水晶や各種珪酸塩鉱物のほか、方解石(Calcite=CaCO3)、燐灰石(Apatite=Ca5Cl(PO4)3)、赤鉄鉱(Hematite=Fe2O3)、コランダム(Corundum=Al2O3)、黄鉄鉱(Pyrite=FeS2)などの鉱物も 晶出する可能性がある。
何は、イオンbondspressenceが起こる
一方、原始大洋に沈降して形成された石灰岩が、大陸合体などの地殻変動で地下10km以上の深部にもぐり込むと、このガス状の残漿にさらされる場合がある。 石灰岩の亀裂に侵入した残漿は、多量のカルシウム(Ca)を溶解し、電気石や螢石はもちろん、ザクロ石(Garnet)や透輝石(Diopside)、珪灰石(Wollastonite=CaSiO3)など、Caに富んだ珪酸塩鉱物を晶出し、接触交代鉱床(contact metasomatic deposits)を形成することもある。
気成時代の最大の特徴は、ペグマタイト中の石英の晶出途上で、大きな地殻変動に遭遇した場合、水分が濃縮されて 流動性の増した(SiO2の豊富な)残漿が、上部の花崗岩体の亀裂に侵入し、脈状の石英鉱床を形成することである。 母体となった ペグマタイトの種類や規模にもよるが、純度が99.9%と非常に高く、石英脈の深さは10km近くにも及ぶことがある。 図 2-5 の「(原始地球の)巨大高地」で、ペグマタイト層が 地表に顔を出していない地域(中国や韓国など)の高純度の石英鉱床は、この石英脈が起因となっている。もちろん石英の晶出後は、随所に晶洞(Druse)が形成され、様々な気成鉱物が晶出することは言うまでもない。
(4)熱水鉱床
(hydrothermal deposits)
熱水鉱床には、a)マグマに含まれている水分(水蒸気)が濃縮された高圧熱水と、b)地殻変動による高圧変成作用で、海水などが高温・高圧になった熱水のほか、c)マグマの上昇によって、地下水などが加熱された熱水があり、特に c)のマグマによって加熱された熱水は、深さ3000m(300気圧)以上の深海底から、マンガン(Mn)やコバルト(Co)などの金属成分を溶かし込んで 湧き出している400℃近くの熱水や、火山地帯の温泉に見られる、硫黄を溶かして湧き出す100℃近くの温泉などで、我々が目にすることが出来る 立派な熱水鉱床である。 そして、玄武岩を主体とする海洋地殻からは SiO2の溶出はあまり望めないが、温泉の熱水は、地下深い所では高温・高圧となっていて、安山岩や花崗岩質の岩体を抜ける際、SiO2はもちろん、金や鉛、亜鉛、銅などの金属成分も溶かして、途中の熱水溜まりに金(Gold=Au)や方鉛鉱(Calena=PbS)、閃亜鉛鉱(Sphalerite=ZnS)、黄銅鉱(Chalcopyrite=CuFeS2)として析出し、日本でも有数な秋田県北部の黒鉱鉱床(Kuroko deposits)などを形成している。 しかし、石英の鉱床としては期待できず、下の写真のように、(黄銅鉱の表面にびっしりと晶出した)水晶などの標本を得るのに、恰好の場所となっているに過ぎない。
従って本項では、a)マグマ起因の熱水鉱床と、b)高圧変成起因の熱水鉱床 について詳しく解説する。
a)岩漿(マグマ)性熱水鉱床
(magma-hydrothermal deposits)
気成時代に大きな変動もなく、そのまま残った ペグマタイト鉱床上部(レンズ状空洞)の残漿は、温度の低下と共に圧力も低下して、水の臨界温度(374℃)以下になると、高温・高圧の熱水に変わる(とは言っても、劇的な変化は起こらない)。 そして、イオン半径が大きいために、(雲母や長石で消費し切れずに)最後まで残った アルカリ金属イオン(Na+,K+)が濃縮され、アルカリ性を呈している。 従って高温・高圧の熱水には、アルカリ水溶液に溶解する形で 多量のSiO2が残っていて、金属イオンが少ないため、気成時代に 余り消費されなかった揮発成分(CO2、F、Cl、etc.)も、かなりの量が溶解しているのである。 このような状況下で、温度と圧力がゆっくりと低下すると、豊富なSiO2が単結晶のα-石英として晶出し、巨大な水晶を形成することがある。 しかし、晶出速度が速いことと、残留している揮発成分の為に、半透明(乳白色)の水晶になり易く、また、相当量のアルミナ(Al2O3=Al-同形置換の形で)や微量の金属イオンを含むため、純度もかなり低い。 結果的に純度99.9%程度で、一般の石英(珪石)として利用される。
一方、その量が少ないとは言え、熱水には各種金属イオン(Al3+,Fe3+、Ca2+,Mg2+、etc.)が残っていて、温度・圧力が降下する過程で、様々な珪酸塩鉱物も(希薄溶液であるがゆえに、温度・圧力のバランスさえ合えば)結晶化できるのである。 水晶の晶出と前後して、紅柱石(Andalusite=Al2OSiO4)や緑泥石(Chlorite)が微細結晶として晶出し、水晶の結晶中に取り込まれることもある。 また、前項の気成鉱物として挙げた、黄玉(Topaz=Al2SiO4OH・F)や電気石(Tourmaline)、更に螢石(Fluorite=CaF2)や方解石(Calcite=CaCO3)なども、水晶の晶出後順次析出し、最後に小さくなった空洞に、カオリン(Kaolinite)やセリサイト(Sericite=白雲母の微細結晶)が晶出して、空洞を埋める場合が多い。
下の写真は、水晶の晶出後 方解石がびっしり張り付いた、熱水鉱床末期の産物である。
不況ガラスのチャットルーム
b)動力(高圧変成)性熱水鉱床
(dynamo-hydrothermal deposits)
動力性熱水鉱床は、マグマ起因のものとは異なり、浅い海底や淡水湖の湖底に堆積した、石英砂岩などの堆積岩と一緒に、地殻変動時の動力作用で、海水や淡水が地中深く潜り込み、圧縮熱や地熱で高温・高圧となった 熱水が関与したものである。 しかし、地殻変動時の動力作用には 様々な形態が考えられ、詳しいことは後述の「動力(高圧)変成鉱床」に譲るとして、本項では、水晶の母体となった石英砂岩が、地下5km程度の比較的浅い所で、動力変成を受けた場合について触れることにする。
大陸合体時の地殻変動で、石英砂岩が海水と共に 地中に潜った場合、その深さとは関係なく、温度・圧力が500℃・5千気圧を超える場合が多い。 これは大陸の合体という途方もない大きな力で圧縮され、圧力はもちろん、圧縮熱で温度も上昇するためである。 砂岩に閉じ込められた海水は高圧熱水となり、砂岩中のあらゆる成分を溶解する。 特にSiO2の溶解度は5%を超えると考えられ、地中深く潜った場合は更に高圧となり、地温の影響で温度も上昇するため、その溶解度は更に増加する。 そして地殻変動の終焉により、圧力が優先して低下する過程で、SiO2の飽和溶液から、周辺の母岩(石英砂岩)に多結晶質(不透明)のα-石英が急速に晶出し始める。 次に、熱水の温度に見合った圧力(約0.8g/cm3 の水蒸気密度の温度・圧力)まで低下した後、450℃・3千気圧付近から、ゆっくりとした温度低下(同時に圧力も低下する)に変わり、透明な水晶が成長し始めるのである。
地中深く潜った石英砂岩と海水から、必ずしも水晶が成長するとは限らない。 水晶を晶出する必要条件は、α-石英の晶出に適した(Si-O-Si結合角が146.5°になる)温度と圧力のバランスや、熱水に一定量のSiO2が溶解する最低の温度と圧力、そして石英を溶融しない温度条件である。 最初の温度と圧力のバランスは、β-石英よりも高圧側に寄った、水蒸気密度0.8g/cm3前後の条件で、海水が密閉されたときに約20%の空隙が生じるか、あるいは海水の密閉前に加熱され、約20%の水蒸気が系外に漏れてしまうと この条件になる。 溶解するSiO2の量は、海水の量にもよるが、(経済的に見合う)鉱床と呼ぶには最低でも1%は必要で、温度・圧力は約300℃・1千気圧以上と考えられる(淡水の場合は、図 6-3 から推測すると約500℃・5千気圧以上)。 最後の石英の溶融は、水分が豊富なため 図 3-11 から約550℃・5千気圧以上となり、これ以下でないと水晶は晶出しない。 従って、下限の300℃・1千気圧付近から上限の550℃・5千気圧まで、右上がりの長円の領域内で 水晶が晶出すると考えられ、降温・降圧過程で、この領域を通過するかどうかが ポイントとなる。 また、SiO2を溶解する媒体としては、Na+イオンを多く含んだ海水が最適で、淡水からの水晶の晶出は、その量が極めて少ないと言える。
このように、水晶の晶出する条件はかなり限定され、更には、母岩となった石英砂岩の品質(アルミナ等の金属不純物)によって水晶の品質も決まる。 99.99%以上の高純度水晶は、99.9%程度の高純度石英が母岩となり、通常の(黒雲母)花崗岩起因の石英砂岩(純度99%程度)が母岩となった場合は、前項の岩漿性熱水鉱床で述べた アルミナ(Al2O3)の多い水晶が晶出する。 そして、残った熱水中に濃縮されたAl3+イオンや他の金属イオンから、緑泥石(Chlorite)やカオリン(Kaolinite)等が晶出し、空洞を埋める場合が多い。 下の写真は、アーカンソー(アメリカ)産の高純度水晶で、主に、石英ガラス(Quartz Glass)や人工水晶(Synthetic Quartz)に使用されていたが、鉱量が少なく、今はほとんど採掘されていないため、貴重な標本となっている。
2.堆積性鉱床
(1)残留鉱床
(eluvial deposits)
前述の岩漿鉱床の花崗岩や後述の堆積鉱床の石英砂岩、更に変成作用で形成された グラニュラークォーツ(Granular Quartz)やアラスカイト(Alaskite)等は、径1mm前後の結晶粒の集合体で、長い間地表で風雨にさらされると、風化作用が進んで バラバラに乖離(かいり)し易い。 そして砂状になって母岩付近に残留したり、風や雨によって移動して 周辺の窪地に堆積したものは、残留鉱床と呼ばれ、花崗岩に含まれるアルカリ長石が 加水分解されて生じたカオリン(Kaolinite)から、日本や中国に多い陶磁器原料の粘土や、アルミニウムの原料となる 熱帯地方のボーキサイト(Bauxite)が生成したのである。
しかし、自然の営力(雨水等による浸食・運搬)による分級・淘汰(とうた)が進んでいないため、石英粒の純度は95%以下と低く、山砂としてコンクリートの骨材に利用するか、選鉱して ビンガラスの原料にする程度で、経済的価値は低い。 一方、前項で述べたアーカンソー水晶は、母岩となった石英砂岩の風化が進み、晶洞が一部押しつぶされてはいるものの、ほぼ原形を留めた残留鉱床で、結晶面に傷の無い水晶塊が得られる。
(2)沖積(ちゅうせき)鉱床
(alluvial deposits)
風化した花崗岩や石英砂岩が自然の営力で川や湖沼に流され、河口付近や湖底に堆積したもので、河川の両脇に堆積したり、一旦海に流された石英粒が、海流や風の作用で 砂丘状に堆積したものも含まれ、別名「漂砂鉱床(placer deposits)」とも呼ばれる。 そして、雨水や風で運搬される際、比重差で重鉱物が分離されたり、微粒となったカオリンや 未風化の長石が洗い流され(飛ばされ)るため、石英粒の純度は95%以上と比較的高く、更に石英粒同士の磨鉱(attrition)作用が働くと、粒界に挟まれて付着していた鉱物が分離し、純度が99%を越える場合もある。
磨鉱によって表面が滑らかになった石英粒は、鋳物砂として自動車エンジン等の鋳造に使用され、オーストラリアや マレーシアの海岸に堆積する白砂は、高純度珪砂(Silica Sand)として、高級ガラスの原料に輸入されている。 一方、高純度水晶の最大の産地である ブラジルのミナスジェライスでは、熱水鉱床の母岩が完全に風化し、雨水によって砂(石英粒)と共に流され、その後隆起した河岸段丘(現丘陵部)の至る所から水晶が産出している。 中には、表面が丸くてスリガラスのようになった 大きな水晶塊も発見されるが、内部は完全透明な最高級の水晶で、水晶球に磨き上げると 数百万円もの値段がつくのである。
(3)堆積鉱床
(sedimentary deposits)
更に海底や湖底に堆積した石英粒は、長い年月をかけて幾重にも積み重なり、それぞれの層間に水中生物の死骸や、泥の層を挟みながら地中深く沈降すると、地圧と化学作用で石英粒が凝結して 砂岩(Sandstone=堆積岩)に変わる。 花崗岩起因の石英粒は、磨鉱により純度が99%近くに達して白色の石英砂岩になるが、閃緑岩起因の石英は、かなりの量の斜長石(比重が石英に近いため分離されにくい)を含むため、不純物が多く有色で純度が低い。 そして水中生物の死骸の層は石灰岩(Limestone)に変わり、泥の層は泥岩(Mudstone)になることは言うまでもない。
比較的浅い海洋底で形成されたこれらの堆積岩は、原始地球時代から繰り返し発生した、大陸の合体による造山活動で 内陸深く押し上げられ、巨大な山脈を形成したのである。 そして、その後訪れた氷河時代に氷河によって削り取られ、低地の氷河湖に堆積して 再び堆積岩に変わる場合もある。 北米大陸に多い氷河起因の石英砂岩は、氷河によって更に磨鉱され 粒形が丸いのが特徴で、破砕してバラバラにすると、鋳型用のレジンコーテッドサンドに最適なほか、純度が99%と比較的高いため、ガラス用にも使用されている。
3.変成性鉱床
(1)動力(高圧)変成鉱床
(dynamo-metamorphic deposits)
大陸の合体時に陸の上に押し上げられず 地中に潜った堆積岩は、膨大な圧力と圧縮熱で変成され、部分溶融が起こって 再結晶化が進む。 圧力が異常に高い場合は、結晶粒の自由な成長は阻害され、圧力によって生じる歪み(摺動)の方向に対して平行な、偏平状の微細結晶粒になり易く、石英砂岩は石英片岩(Quartz-schist)に、泥岩は片状に剥がれ易い千枚岩(Phyllite)に変わるが、石灰岩は高圧下では融点(約1300℃)が高く変成されにくい。 更に地中深く潜った堆積岩や、深部で形成された 花崗岩等の深成岩は、地熱も加わって更に高温になり、結晶粒が成長して片状構造を失い、異種鉱物の結晶粒が縞状に並んだ片麻岩(Gneiss)となって、数十〜数百kmにも及ぶ広域変成帯を形成する。
地下5km前後の浅い所で発生した堆積岩の高圧変成作用は、圧力が1万気圧に達する場合もあるが、温度は500℃前後で差程高くはない。 しかし、堆積岩中に豊富に含まれる水分の影響で、石英の融点が著しく低下するため、石英砂岩の再結晶化が促進され、片麻岩の一種で、異種鉱物を殆ど含まない珪岩(Quartzite)に変化する。 純度は母岩の石英砂岩と同じ99%程度で、差程純化されてはいないが、変成領域が広大で世界中に分布し、埋蔵量は無尽蔵に近く、主にフェロシリコン(合金鉄)や金属シリコンなど、塊状の石英を原料とする用途に利用されている。 そして既に(1-4-b)の動力性熱水鉱床で述べたように、石英砂岩と海水が同時に潜って、同じ条件下で高圧変成された場合は、海水が閉じ込められた空隙に、水晶が晶出するのである。
一方、地域は北米等に限定されるが、地下15km前後で形成された白雲母花崗岩が 高圧変成されると、圧力と温度は更に上昇し、水分の影響で 石英はもちろん長石も溶融される。 そして、不純物を吐き出しながら再結晶化するため、石英純度が99.9%を越える片麻岩(花崗片麻岩 Granite-gneiss)を形成するのである。 この花崗片麻岩はアラスカイト(Alaskite)と呼ばれ、アメリカなどでは粉砕し精製して、高級ガラスや 石英ルツボなどに利用されている。 詳しくは本文の2-5(4)を参照されたい。
(2)高温変成鉱床
(thermo-metamorphic deposits)
大陸の分裂時にマントルから上昇してきた1500℃近くの玄武岩質マグマが、地中深く潜った堆積岩(動力による変成岩も含む)の割れ目に貫入し、周囲の岩石を溶融して再結晶化が起こる。 比較的圧力の低い所で 加熱された石英砂岩は、水分による融点低下があまり望めず、部分溶融されて 母岩とほぼ同じ純度の珪石(片麻状構造が失われた珪岩)に変わるが、動力起因の珪岩と比べると 鉱量が著しく少ない。 同じく、泥岩(あるいは軽い動力変成を受けた粘板岩 Clayslate)は、各成分が微細結晶化して、割れると貝殻状の断面が現れる 硬いホルンフェルス(Hornfels)に変わり、動力では変成されなかった石灰岩も溶融されて、方解石の結晶集合体である 結晶質石灰岩(大理石 Marble)が誕生する。
一方、地下15km前後で形成された花崗岩は、玄武岩質マグマの貫入により、更に圧力が上昇して 7千気圧を越えると、水分による融点低下も加わって、石英、長石、雲母の各成分が完全に溶融する(図 3-12)。 そして、降温過程で800℃以上に長期間保持されると、花崗岩は各成分の純化が進み、冷え固まって 粒子が揃った元の花崗岩に戻るが、粒界に吐き出された不純物から、微粒の赤鉄鉱や緑泥石を晶出する例が多い。 更に地中20km付近で形成され、純度が99.9%と高いペグマタイト石英は、同じ条件下にさらされても、水分が少ないため 完全には溶融せず、部分溶融して粒状に再結晶するが、やはり粒界に不純物を吐き出し、純度が高純度水晶並の99.99%にアップすることがある。 いわゆるグラニュラークォーツ(Granular quartz)で、南インドに多く産し、粉砕精製して粒界の不純物を取り除き、限りある高純度水晶の代用として、石英ガラスの原料などに利用されているが、鉱量は10万トン単位で少なく、スポット状に分散している(詳しくは本文の2-5(3)を参照)。
しかし、いかに玄武岩質マグマが高温でも、周囲の岩石を溶融する範囲は限られ、通常は直径100m程でかなり狭い。 その外側に位置したペグマタイト石英は、部分溶融さえ起こらず、純度も母岩と変わらない99.9%のまま、グラッシークォーツ(Glassy quartz)として、南インドやスリランカを中心とした、帯状の狭い範囲に産出している。 品位は グラニュラークォーツより劣るものの、鉱量は100万トン単位で比較的多いため、粉砕して半導体の樹脂用フィラー(充填材)や光学ガラス用などに 幅広く利用されている。
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