2012年5月5日土曜日

マグマを起点に自然の営力で形成された石英鉱床


初期画面: 解説:

特集:マグマを起点に自然の営力で形成された石英鉱床

岩漿鉱床:.
ペグマタイト鉱床:.
気成鉱床:.
熱水鉱床:.
岩漿性:.
動力性:.
残留鉱床:.
沖積鉱床:.
堆積鉱床:.
動力変成鉱床:.
高温変成鉱床:.

写真は「鉱物の加藤さん」提供です。         

1.岩漿(がんしょう)性鉱床

(1)岩漿鉱床          
 (magmatic deposits)
 原始地球時代に形成された花崗岩(Granite)が、大陸の分裂時にマントルから上昇してきた 超高温の玄武岩質マグマの貫入(侵入)によって再溶融されたり大陸の合体時の地殻変動による高温高圧の下豊富な水分(海水等)の影響で再溶融した流紋岩質マグマは、SiO266wt%以上含む酸性岩漿に属している そして地下10km以上の深部でゆっくり冷却されると分別結晶作用(fractional crystallization)が進んで、長石(Feldspar)類や雲母(Mica)類の晶出でSiO2成分が消費されるものの、余剰のSiO2が直径数mm程度のより完全な単結晶-石英)に成長し、様々な石英資源の母体となっている しかし、地殻変動に伴い火山となって 地上に噴出すると流紋岩質マグマの冷却が速いため微細結晶の集まった流紋岩(Rhyolite)となり、更に急冷された場合はガラス状の黒曜石(Obsidian)に変化する

 代表的な酸性岩漿である流紋岩質マグマは、約72(wt)%のSiO2分を含み、次いでAl2O3が約14%、K2ONa2OLi2OCaOMgOのアルカリ(土類)金属が約10%で、ほぼ96%を占めている また、重金属成分としてはほとんどが酸化鉄で、FeOFe2O3の形で含まれているが母体が黒雲母花崗岩(Biotite-granite)の場合は両者で2%を超え、その大半が2価の鉄(FeO)MgOと共に黒雲母を生成する 白雲母花崗岩(Muscovite-granite)の場合は鉄分が1%を下回り、それも3価の鉄(Fe2O3)が主体で黒雲母を晶出できず専ら白雲母を晶出する訳であるが残った3価の鉄イオンは高圧変成を受けてザクロ石を形成する場合が多い そして、マグマ中の残り23%の成分は、2%近くの水分(H2O)と、低沸点の硼素(B)化合物(ハロゲン化物などで低圧下では加水分解されてBO3イオンとなる)、更に炭酸ガス(CO2)、塩素(Cl)、フッ素(F)、リン(P)、硫黄(S)などでこれらをまとめて揮発成分と呼んでいる

 一方、SiO252wt%以下の塩基性岩漿である玄武岩質マグマは地下でゆっくり冷却されると 斑れい岩(Gabbro)となるが、輝石(Pyroxene)や斜長石(Plagioclase)の晶出でSiO2成分が消費され尽くし石英は形成されない そして、流動性が大きいため 地表に噴出し易く微晶質で色黒の玄武岩(Basalt)になる また、SiO2成分が5365wt%の中性岩漿である安山岩質マグマは地中深部では閃緑岩(Diorite=黒みかげ)に、噴出すると安山岩(Andesite=アンデス山脈や日本の火山に多く"安山"は直訳)になるが晶出する石英は少ないため石英資源にはなりにくい


水が沸騰するとどうなりますか?

(2)ペグマタイト鉱床      
 (pegmatitic deposits)
 原始地球時代に誕生した花崗岩層(深さ520km)の下部に、大型隕石起因の 流紋岩質のマグマ溜まりが形成され花崗岩よりも高圧・低温下でゆっくり冷却されるとマグマ溜まりの周囲から雲母、正長石・曹長石、石英の順に晶出し中心に 巨大な石英鉱床を形成したことは本文の3-4(1)で詳しく解説している この流紋岩質マグマは大型隕石の衝突によって生じた 原始マグマから、地下100km近くの超高圧・高温下でカンラン石(Olivine)やザクロ石(Garnet)の晶出にMg2+Fe2+,Fe3+などの金属イオンが大量に消費され残り少ない金属イオンも、普通輝石(Augite)や普通角閃石(Hornblende)で消耗し尽くされて、(比重が小さくなり)深さ20kmの地点まで上昇してきたマグマである 原始地球が冷えるに従って外部からゆっくりと冷却されると白雲母(Muscovite)がマグマ溜まりの外側に大きな結晶を形成する 雲母の晶出後は融点の差で正長石(Orthoclace)→曹長石(Albite)の順にあるいは両者が共融したアルカリ長石(Alkali feldspars)として晶出し最後に残った大きな空洞に水分濃度が5%以上になり流動性の増した残漿(ざんしょう)から石英がα-石英として晶出し大きな結晶を形成する場合が多い このペグマタイト石英(珪石)は純度が99.9%と高くひと塊が数百万トンに達するものもある

 分厚い花崗岩層に、高温の玄武岩質マグマが貫入した場合も豊富な水分の影響で温度と圧力が上昇して 水分による融点低下が起こり花崗岩が再溶融して流紋岩質のマグマ溜まりが形成される その規模はかなり小さいもののマグマが上昇せずに、地下20km近くの深部で 外側からゆっくり冷却されると雲母、長石、石英の順に晶出し比較的大きな結晶を形成することができる そして白雲母花崗岩が母体となった場合は3成分とも純度が高く、石英は99.9%に達するが黒雲母花崗岩の場合は99%程度で純度は低い 特に黒雲母(Biotite)や角閃石(Amphibole)水分による融点低下の影響を受けにくいため未溶融のまま残留するか早期に微細結晶化して 石英に混入する可能性が高い いずれにせよ一つの結晶塊の大きさは地中の深さと温度降下速度で決まるが、最大でも10万トン程度で、深さが15km以下の浅い所では元の花崗岩に戻ってしまうのである しかし条件次第では花崗岩の晶出後 様々な成分を溶解した熱水が随所に晶洞(Druse=ガマ)を形成し温度降下も緩慢になって、数cmの結晶粒に成長することがある 次の「気成鉱床」で詳しく述べるが同時に様々な気成鉱物を晶出し鉱物標本の宝庫となっている 鉱物図鑑に載っている ペグマタイト(Pegmatite=巨晶花崗岩)は この種のもので本来の地球的規模のペグマタイトとは少々趣(おもむき)を異にする

(3)気成鉱床          
 (pneumatolytic deposits)
 ペグマタイト晶出後に残った水分は石英塊上部のすき間に集まり、余剰のSiO2や、マグマ中の揮発成分(CO2BO3ClFPS,etc.)を溶解した濃いスープ状の高密度水蒸気になっている そして相次ぐ地殻変動によって上部の花崗岩層に生じた 大きな亀裂に侵入し花崗岩中の様々な金属イオン(Ca2+Mg2+Fe2+Fe3+Al3+Mn2+、etc.)を溶解しながら、温度よりも 圧力が優先して低下する過程で金属イオンや揮発成分などを材料に様々な鉱物が晶出するのである 代表的な例として、電気石や斧石(共にBO3を含む)、黄玉(トパーズ)や螢石(共にFを含む)などがありこれらを気成鉱物と呼んでいる

 環状珪酸塩鉱物の電気石(Tourmaline=六角環)と斧石(Axinite=四角環)では電気石の方が低圧下で晶出し易く独立型珪酸塩の黄玉(Topaz=Al2SiO4OHF)は高圧下で晶出し易いが圧力変化の激しい気成鉱床内では下の写真のように別々の圧力条件下で晶出した黄玉(透明結晶)と電気石(黒色結晶)を、最� �に低圧下で晶出する螢石(Fluorite=CaF2白色結晶)がつなぎ止めている場合も多い そして、次項の「熱水鉱床」と同様水晶や各種珪酸塩鉱物のほか方解石(Calcite=CaCO3)、燐灰石(Apatite=Ca5Cl(PO4)3)、赤鉄鉱(Hematite=Fe2O3)、コランダム(Corundum=Al2O3)、黄鉄鉱(Pyrite=FeS2)などの鉱物も 晶出する可能性がある


何は、イオンbondspressenceが起こる

 一方、原始大洋に沈降して形成された石灰岩が大陸合体などの地殻変動で地下10km以上の深部にもぐり込むとこのガス状の残漿にさらされる場合がある 石灰岩の亀裂に侵入した残漿は多量のカルシウム(Ca)を溶解し電気石や螢石はもちろんザクロ石(Garnet)や透輝石(Diopside)、珪灰石(Wollastonite=CaSiO3)など、Caに富んだ珪酸塩鉱物を晶出し接触交代鉱床(contact metasomatic deposits)を形成することもある

 気成時代の最大の特徴は、ペグマタイト中の石英の晶出途上で大きな地殻変動に遭遇した場合水分が濃縮されて 流動性の増した(SiO2の豊富な)残漿が、上部の花崗岩体の亀裂に侵入し脈状の石英鉱床を形成することである 母体となった ペグマタイトの種類や規模にもよるが純度が99.9%と非常に高く石英脈の深さは10km近くにも及ぶことがある 図 2-5 の「(原始地球の)巨大高地」でペグマタイト層が 地表に顔を出していない地域(中国や韓国など)の高純度の石英鉱床はこの石英脈が起因となっているもちろん石英の晶出後は随所に晶洞(Druse)が形成され様々な気成鉱物が晶出することは言うまでもない

(4)熱水鉱床          
 (hydrothermal deposits)
 熱水鉱床には、a)マグマに含まれている水分(水蒸気)が濃縮された高圧熱水とb)地殻変動による高圧変成作用で海水などが高温・高圧になった熱水のほかc)マグマの上昇によって地下水などが加熱された熱水があり特に c)のマグマによって加熱された熱水は深さ3000m(300気圧)以上の深海底からマンガン(Mn)やコバルト(Co)などの金属成分を溶かし込んで 湧き出している400℃近くの熱水や火山地帯の温泉に見られる硫黄を溶かして湧き出す100℃近くの温泉などで我々が目にすることが出来る 立派な熱水鉱床である そして玄武岩を主体とする海洋地殻からは SiO2の溶出はあまり望めないが温泉の熱水は地下深い所では高温・高圧となっていて安山岩や花崗岩質の岩体を抜ける際、SiO2はもちろん、金や鉛、亜鉛銅などの金属成分も溶かして途中の熱水溜まりに金(Gold=Au)や方鉛鉱(Calena=PbS)、閃亜鉛鉱(Sphalerite=ZnS)、黄銅鉱(Chalcopyrite=CuFeS2)として析出し日本でも有数な秋田県北部の黒鉱鉱床(Kuroko deposits)などを形成している しかし、石英の鉱床としては期待できず下の写真のように、(黄銅鉱の表面にびっしりと晶出した)水晶などの標本を得るのに恰好の場所となっているに過ぎない
 従って本項では、a)マグマ起因の熱水鉱床とb)高圧変成起因の熱水鉱床 について詳しく解説する

a)岩漿(マグマ)性熱水鉱床  
(magma-hydrothermal deposits)
 気成時代に大きな変動もなく、そのまま残った ペグマタイト鉱床上部(レンズ状空洞)の残漿は温度の低下と共に圧力も低下して水の臨界温度(374)以下になると高温・高圧の熱水に変わる(とは言っても劇的な変化は起こらない)。 そしてイオン半径が大きいために、(雲母や長石で消費し切れずに)最後まで残った アルカリ金属イオン(Na+K+)が濃縮されアルカリ性を呈している 従って高温・高圧の熱水にはアルカリ水溶液に溶解する形で 多量のSiO2が残っていて金属イオンが少ないため、気成時代に 余り消費されなかった揮発成分(CO2FCl、etc.)も、かなりの量が溶解しているのである このような状況下で温度と圧力がゆっくりと低下すると豊富なSiO2が単結晶のα-石英として晶出し巨大な水晶を形成することがある しかし、晶出速度が速いことと残留している揮発成分の為に半透明(乳白色)の水晶になり易くまた、相当量のアルミナ(Al2O3Al-同形置換の形で)や微量の金属イオンを含むため純度もかなり低い 結果的に純度99.9%程度で、一般の石英(珪石)として利用される

 一方、その量が少ないとは言え熱水には各種金属イオン(Al3+Fe3+Ca2+Mg2+、etc.)が残っていて温度・圧力が降下する過程で様々な珪酸塩鉱物も(希薄溶液であるがゆえに温度・圧力のバランスさえ合えば)結晶化できるのである 水晶の晶出と前後して紅柱石(Andalusite=Al2OSiO4)や緑泥石(Chlorite)が微細結晶として晶出し水晶の結晶中に取り込まれることもある また、前項の気成鉱物として挙げた黄玉(Topaz=Al2SiO4OHF)や電気石(Tourmaline)、更に螢石(Fluorite=CaF2)や方解石(Calcite=CaCO3)なども、水晶の晶出後順次析出し最後に小さくなった空洞にカオリン(Kaolinite)やセリサイト(Sericite=白雲母の微細結晶が晶出して空洞を埋める場合が多い
 下の写真は、水晶の晶出後 方解石がびっしり張り付いた熱水鉱床末期の産物である


不況ガラスのチャットルーム

b)動力(高圧変成)性熱水鉱床
(dynamo-hydrothermal deposits)
 動力性熱水鉱床は、マグマ起因のものとは異なり浅い海底や淡水湖の湖底に堆積した石英砂岩などの堆積岩と一緒に地殻変動時の動力作用で海水や淡水が地中深く潜り込み圧縮熱や地熱で高温・高圧となった 熱水が関与したものである しかし地殻変動時の動力作用には 様々な形態が考えられ詳しいことは後述の「動力(高圧)変成鉱床」に譲るとして、本項では水晶の母体となった石英砂岩が、地下5km程度の比較的浅い所で動力変成を受けた場合について触れることにする

 大陸合体時の地殻変動で、石英砂岩が海水と共に 地中に潜った場合、その深さとは関係なく温度・圧力が500℃・5千気圧を超える場合が多い これは大陸の合体という途方もない大きな力で圧縮され圧力はもちろん圧縮熱で温度も上昇するためである 砂岩に閉じ込められた海水は高圧熱水となり砂岩中のあらゆる成分を溶解する 特にSiO2の溶解度は5%を超えると考えられ地中深く潜った場合は更に高圧となり地温の影響で温度も上昇するためその溶解度は更に増加する そして地殻変動の終焉により圧力が優先して低下する過程で、SiO2の飽和溶液から周辺の母岩(石英砂岩)に多結晶質(不透明)α-石英が急速に晶出し始める 次に、熱水の温度に見合った圧力(0.8g/cm3 の水蒸気密度の温度・圧力)まで低下した後、450℃・3千気圧付近からゆっくりとした温度低下(同時に圧力も低下する)に変わり、透明な水晶が成長し始めるのである

 地中深く潜った石英砂岩と海水から必ずしも水晶が成長するとは限らない 水晶を晶出する必要条件は、α-石英の晶出に適した(Si-O-Si結合角が146.5°になる)温度と圧力のバランスや熱水に一定量のSiO2が溶解する最低の温度と圧力そして石英を溶融しない温度条件である 最初の温度と圧力のバランスは、β-石英よりも高圧側に寄った水蒸気密度0.8g/cm3前後の条件で海水が密閉されたときに約20%の空隙が生じるかあるいは海水の密閉前に加熱され、約20%の水蒸気が系外に漏れてしまうと この条件になる 溶解するSiO2の量は、海水の量にもよるが、(経済的に見合う)鉱床と呼ぶには最低でも1%は必要で、温度・圧力は約300℃・1千気圧以上と考えられる(淡水の場合は図 6-3 から推測すると約500℃・5千気圧以上)。 最後の石英の溶融は水分が豊富なため 図 3-11 から約550℃・5千気圧以上となりこれ以下でないと水晶は晶出しない 従って、下限の300℃・1千気圧付近から上限の550℃・5千気圧まで右上がりの長円の領域内で 水晶が晶出すると考えられ降温・降圧過程でこの領域を通過するかどうかが ポイントとなる また、SiO2を溶解する媒体としては、Na+イオンを多く含んだ海水が最適で淡水からの水晶の晶出はその量が極めて少ないと言える

 このように、水晶の晶出する条件はかなり限定され更には、母岩となった石英砂岩の品質(アルミナ等の金属不純物)によって水晶の品質も決まる 99.99%以上の高純度水晶は、99.9%程度の高純度石英が母岩となり、通常の(黒雲母)花崗岩起因の石英砂岩(純度99%程度)が母岩となった場合は前項の岩漿性熱水鉱床で述べた アルミナ(Al2O3)の多い水晶が晶出する そして、残った熱水中に濃縮されたAl3+イオンや他の金属イオンから、緑泥石(Chlorite)やカオリン(Kaolinite)等が晶出し空洞を埋める場合が多い 下の写真は、アーカンソー(アメリカ)産の高純度水晶で主に、石英ガラス(Quartz Glass)や人工水晶(Synthetic Quartz)に使用されていたが、鉱量が少なく今はほとんど採掘されていないため貴重な標本となっている

2.堆積性鉱床

(1)残留鉱床           
 (eluvial deposits)
 前述の岩漿鉱床の花崗岩や後述の堆積鉱床の石英砂岩更に変成作用で形成された グラニュラークォーツ(Granular Quartz)やアラスカイト(Alaskite)等は径1mm前後の結晶粒の集合体で長い間地表で風雨にさらされると風化作用が進んで バラバラに乖離(かいり)し易い そして砂状になって母岩付近に残留したり風や雨によって移動して 周辺の窪地に堆積したものは残留鉱床と呼ばれ花崗岩に含まれるアルカリ長石が 加水分解されて生じたカオリン(Kaolinite)から日本や中国に多い陶磁器原料の粘土やアルミニウムの原料となる 熱帯地方のボーキサイト(Bauxite)が生成したのである

 しかし、自然の営力(雨水等による浸食・運搬)による分級・淘汰(とうた)が進んでいないため石英粒の純度は95%以下と低く山砂としてコンクリートの骨材に利用するか選鉱して ビンガラスの原料にする程度で経済的価値は低い 一方前項で述べたアーカンソー水晶は母岩となった石英砂岩の風化が進み晶洞が一部押しつぶされてはいるもののほぼ原形を留めた残留鉱床で結晶面に傷の無い水晶塊が得られる


(2)沖積(ちゅうせき)鉱床    
 (alluvial deposits)
 風化した花崗岩や石英砂岩が自然の営力で川や湖沼に流され河口付近や湖底に堆積したもので河川の両脇に堆積したり一旦海に流された石英粒が海流や風の作用で 砂丘状に堆積したものも含まれ別名「漂砂鉱床(placer deposits)」とも呼ばれる そして、雨水や風で運搬される際比重差で重鉱物が分離されたり微粒となったカオリンや 未風化の長石が洗い流され(飛ばされ)るため、石英粒の純度は95%以上と比較的高く更に石英粒同士の磨鉱(attrition)作用が働くと粒界に挟まれて付着していた鉱物が分離し純度が99%を越える場合もある

 磨鉱によって表面が滑らかになった石英粒は鋳物砂として自動車エンジン等の鋳造に使用されオーストラリアや マレーシアの海岸に堆積する白砂は、高純度珪砂(Silica Sand)として高級ガラスの原料に輸入されている 一方、高純度水晶の最大の産地である ブラジルのミナスジェライスでは熱水鉱床の母岩が完全に風化し雨水によって砂(石英粒)と共に流されその後隆起した河岸段丘(現丘陵部)の至る所から水晶が産出している 中には表面が丸くてスリガラスのようになった 大きな水晶塊も発見されるが内部は完全透明な最高級の水晶で水晶球に磨き上げると 数百万円もの値段がつくのである

(3)堆積鉱床           
 (sedimentary deposits)
 更に海底や湖底に堆積した石英粒は長い年月をかけて幾重にも積み重なりそれぞれの層間に水中生物の死骸や泥の層を挟みながら地中深く沈降すると地圧と化学作用で石英粒が凝結して 砂岩(Sandstone=堆積岩)に変わる 花崗岩起因の石英粒は磨鉱により純度が99%近くに達して白色の石英砂岩になるが閃緑岩起因の石英はかなりの量の斜長石(比重が石英に近いため分離されにくい)を含むため不純物が多く有色で純度が低い そして水中生物の死骸の層は石灰岩(Limestone)に変わり、泥の層は泥岩(Mudstone)になることは言うまでもない

 比較的浅い海洋底で形成されたこれらの堆積岩は原始地球時代から繰り返し発生した大陸の合体による造山活動で 内陸深く押し上げられ巨大な山脈を形成したのである そしてその後訪れた氷河時代に氷河によって削り取られ低地の氷河湖に堆積して 再び堆積岩に変わる場合もある 北米大陸に多い氷河起因の石英砂岩は氷河によって更に磨鉱され 粒形が丸いのが特徴で破砕してバラバラにすると鋳型用のレジンコーテッドサンドに最適なほか純度が99%と比較的高いためガラス用にも使用されている

3.変成性鉱床

(1)動力(高圧)変成鉱床    
 (dynamo-metamorphic deposits)
 大陸の合体時に陸の上に押し上げられず 地中に潜った堆積岩は膨大な圧力と圧縮熱で変成され部分溶融が起こって 再結晶化が進む 圧力が異常に高い場合は結晶粒の自由な成長は阻害され圧力によって生じる歪み(摺動)の方向に対して平行な偏平状の微細結晶粒になり易く石英砂岩は石英片岩(Quartz-schist)に、泥岩は片状に剥がれ易い千枚岩(Phyllite)に変わるが、石灰岩は高圧下では融点(約1300℃)が高く変成されにくい 更に地中深く潜った堆積岩や深部で形成された 花崗岩等の深成岩は地熱も加わって更に高温になり結晶粒が成長して片状構造を失い異種鉱物の結晶粒が縞状に並んだ片麻岩(Gneiss)となって数十〜数百kmにも及ぶ広域変成帯を形成する

 地下5km前後の浅い所で発生した堆積岩の高圧変成作用は圧力が1万気圧に達する場合もあるが温度は500℃前後で差程高くはない しかし堆積岩中に豊富に含まれる水分の影響で石英の融点が著しく低下するため石英砂岩の再結晶化が促進され片麻岩の一種で異種鉱物を殆ど含まない珪岩(Quartzite)に変化する 純度は母岩の石英砂岩と同じ99%程度で、差程純化されてはいないが変成領域が広大で世界中に分布し埋蔵量は無尽蔵に近く主にフェロシリコン(合金鉄)や金属シリコンなど塊状の石英を原料とする用途に利用されている そして既に(1-4-b)の動力性熱水鉱床で述べたように石英砂岩と海水が同時に潜って同じ条件下で高圧変成された場合は海水が閉じ込められた空隙に水晶が晶出するのである

 一方、地域は北米等に限定されるが、地下15km前後で形成された白雲母花崗岩が 高圧変成されると圧力と温度は更に上昇し水分の影響で 石英はもちろん長石も溶融される そして、不純物を吐き出しながら再結晶化するため石英純度が99.9%を越える片麻岩(花崗片麻岩 Granite-gneiss)を形成するのである この花崗片麻岩はアラスカイト(Alaskite)と呼ばれアメリカなどでは粉砕し精製して高級ガラスや 石英ルツボなどに利用されている 詳しくは本文の2-5(4)を参照されたい


(2)高温変成鉱床        
 (thermo-metamorphic deposits)
 大陸の分裂時にマントルから上昇してきた1500℃近くの玄武岩質マグマが地中深く潜った堆積岩(動力による変成岩も含む)の割れ目に貫入し周囲の岩石を溶融して再結晶化が起こる 比較的圧力の低い所で 加熱された石英砂岩は水分による融点低下があまり望めず部分溶融されて 母岩とほぼ同じ純度の珪石(片麻状構造が失われた珪岩)に変わるが動力起因の珪岩と比べると 鉱量が著しく少ない 同じく、泥岩(あるいは軽い動力変成を受けた粘板岩 Clayslate)は、各成分が微細結晶化して割れると貝殻状の断面が現れる 硬いホルンフェルス(Hornfels)に変わり動力では変成されなかった石灰岩も溶融されて方解石の結晶集合体である 結晶質石灰岩(大理石 Marble)が誕生する

 一方、地下15km前後で形成された花崗岩は玄武岩質マグマの貫入により更に圧力が上昇して 7千気圧を越えると水分による融点低下も加わって石英、長石雲母の各成分が完全に溶融する(図 3-12)。 そして、降温過程で800℃以上に長期間保持されると花崗岩は各成分の純化が進み冷え固まって 粒子が揃った元の花崗岩に戻るが粒界に吐き出された不純物から微粒の赤鉄鉱や緑泥石を晶出する例が多い 更に地中20km付近で形成され、純度が99.9%と高いペグマタイト石英は同じ条件下にさらされても水分が少ないため 完全には溶融せず部分溶融して粒状に再結晶するがやはり粒界に不純物を吐き出し純度が高純度水晶並の99.99%にアップすることがある いわゆるグラニュラークォーツ(Granular quartz)で、南インドに多く産し粉砕精製して粒界の不純物を取り除き限りある高純度水晶の代用として石英ガラスの原料などに利用されているが鉱量は10万トン単位で少なくスポット状に分散している(詳しくは本文の2-5(3)を参照)。

 しかしいかに玄武岩質マグマが高温でも周囲の岩石を溶融する範囲は限られ通常は直径100m程でかなり狭い その外側に位置したペグマタイト石英は部分溶融さえ起こらず純度も母岩と変わらない99.9%のまま、グラッシークォーツ(Glassy quartz)として、南インドやスリランカを中心とした帯状の狭い範囲に産出している 品位は グラニュラークォーツより劣るものの鉱量は100万トン単位で比較的多いため粉砕して半導体の樹脂用フィラー(充填材)や光学ガラス用などに 幅広く利用されている



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